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Lee-Byung-hun addicted

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Dreaming of LA  <2>

Dreaming of LA  2




「・・・・プー。ただいま外出しております。
御用の方はメッセージをどうぞ」

ハリウッドのレストランから引き上げたその夜、
彼が東京の下落合の家に電話をかけると
無機質な留守番電話のメッセージが彼を出迎えた。

「おかしいなぁ~。なんで誰もいないんだよ」

頭をかきむしる。

最後に揺と話したのは・・・・三日前。

長引いた仕事がもう終わるから近々LAに来られそうだという内容だった。

出発するときに連絡すると言われて電話を切ったものの・・気になる。

早朝からロケがあることを伝えてあるせいで気を使って電話できないのかも知れない・・。

彼から何度か電話をかけてみたものの携帯さえつながらない。

「全く・・・どこ行ってるんだ?」

受話器を置いた彼は恨めしそうに電話を眺めた。

          


翌日の晩。

「・・・・・・・・・・」

彼はテーブル置かれた生野菜とゆで卵の白身を呆然と眺めていた。

「何だか気の毒だね・・食うか?こっち」

「いや。これも仕事だから」

彼は大きくため息をつくと

テーブルに並べられたサラダを黙々と食べ始めた。

ほおばりながら冷蔵庫に向かうと
綺麗に並べられたFIJIを一本取り出しゴクゴクと飲む。

「はぁ・・」

そして、また大きくため息をついた。

「揺ちゃん、まだ連絡取れないの?」

そう問いかけた気心の知れたマネージャーに

「心配ないよ。仕事は順調。何にも問題はないさ」

彼はおどけてそう答えた。

そしてあっという間に食べきれるだけの量しかない夕飯を終え、
水を抱え部屋へ戻った。


ベッドに横になり天井を見上げる。

枕元においてある脚本をペラペラとめくる。

確かに英語はそんなに苦にならない。

こっちに来て二ヶ月。

会話にもだいぶ慣れてきて英語で冗談が言えるようになった。

帰ってくれば、アパートメントでは韓国語だし、

オモニやウニに電話して元気な声を聞けば気が晴れる。

でも、やっぱり・・・あいつがいないと。

あいつの声を聞かないと何だか落ち着かなくて。

何かが足りないような気分になるんだよな。

起き上がって窓の外を眺めると、
そこにはダウンタウンの夜の静寂が広がっていた。

遠くにリトル東京のネオンサインがかすかに見える。

「ラーメン・・・スシ・・・シャブシャブ」

彼は意味もなくそうつぶやくとまた大きくため息をついた。



ふとテーブルを見ると携帯が光りながら震えている。

そうだ、バイブにしっぱなしだったっけ。

慌てて手に取るとそこには発信者「久遠寺 彰介」の文字。

一年前と少し前、ウナと結婚した彰介はその後すぐ、父の映画配給会社のLA支店勤務となった。

今はLAのダウンタウンにあるオフィスで、日本映画と韓国映画の現地における紹介、映画興行の普及に努め、コンスタントな配給への土壌作りを着々と進めている。

ビョンホンがLAにきたとき、真っ先に連絡したのが彼であることは言うまでもない。


「もしもし?ヒョン?」

相変わらず、どこか脳天気な声が響く。

「ああ・・相変わらず元気そうだな」

彼はそういってちょっと呆れたように笑った。

「ああ。俺は元気だよ。そういうヒョンは何か暗くない?」

「暗くだってなるさ。いくら仕事は順調でもメシはろくに食えないし・・」

「揺もいないしね」

彰介はからかうように合いの手を入れた。

「・・・・」電話口で苦笑いするビョンホン。


「明日は朝早いの?」

「いや、明日は午後だ。珍しく」

「良かった。じゃあ、これから気分転換にうちに来ない?」

「今から?もうすぐ8時だぜ」

「ヒョン・・子供じゃないんだから・・8時に寝るなよ」

彰介はゲラゲラと笑った。

「わかったよ。じゃ今から行く」

「そうだ。悪いんだけど途中でオムツ買ってきてくれる?」

「あぇ?」

「紙オムツ。スエの。なくなっちゃってさ。悪いね。
じゃ、よろしく~。
そうそう。この時間、まだ道混んでるからFigueror St.通ってね。」

「おいっ!何?disposal・・di?って・・どこで売ってるんだよっ!
道わかんね~し。」

プープープー。

彼の問いかけに答えることもなく、電話はすでに切れていた。

「全く・・・なに買ってこいって?フィゲロアって・・あ、あそこか・・」

「ね。Disposal dia・・何とかって何?赤ちゃんが使うやつ」

マネージャーに尋ねる。

「あ~オムツですよ。紙オムツ」

「あ~。オムツね。ありがと。ちょっと行って来る。先に寝てて」

ビョンホンはブツブツとつぶやきながら車のキーを持ってアパートメントを後にした。




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